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12/1 礼拝メッセージ「新しい人間の創造」

 自らの正義を主張した戦争が続いていますが、マタイは、その人間が持つ自分の

正しさ、自分の正義が破綻したマリアの婚約者ヨセフの姿から、クリスマスの物語

を語り始めるのです。

 

 マタイは、その福音書の書き始めに「アブラハムの子ダビデの子、イエス・キリ

ストの系図(ゲネシス)」と書きました。「系図」と訳された「ゲネシス」は、「始

まり」という意味です。民族の始まり(系図)だけではなく、イエス・キリストこ

そゲネシス(物語の始まり)なんだと最初に言うのです。旧約聖書「創世記」も

「ゲネシス」という言葉ですから、マタイはここで正しい人、ヨセフの中にこそイ

エス・キリストによる、新しい創世記がある、物語が始まるのだ、と。

 

 人間は自らの正義を主張して愚かな戦いを、そこかしこに、引き起こします。し

かし神は、そういう中にゲネシス、神の創造を行うのです。マタイによる福音書は、

その新しい創造の初めに、正しい人、ヨセフの悩みを、書いていくのです。人間の

正しさ、正義、それゆえの悩みの中に、新しい創造が始まって行くというのです。

今日の個所に書かれているのは、ヨセフが自分の正義を貫こうにも、いよいよ悩み

が深まっていくということでした。「決心した」と言いながら、「このように考えて

いる」つまり、行ったり来たりしているヨセフです。正義があるから、現実と向き

合って、悩みになる。自分の中に埋め込まれていた正義、自分の信じていた正義が

破綻して「ばかやろう!」と言うのです(2002・11・4 朝日新聞「声」)。それは私

たちにもあることです。しかし、そこに神が介入して来ます。「神は我々と共にお

られる」。人は、自分の正しさに破たんし、正義を貫き通せず、途方に暮れるので

す。その時、そこに、神が介入して来るのです。「神は我々と共におられる」。神の、

イエス・キリストのゲネシス、新しい物語、新しい、神の創造が始まるのです。そ

の時ヨセフは、自分の正しさなど、この際、かなぐり捨てて、マリアと共に生きる

ことを選び取っていく。新しい人間のゲネシス、新しい人間の創造でした。私たち

は、今年のクリスマス、自分の正義が打ち砕かれて、ここから新しく創造された人

間として立ち上がるよう、招かれるのです。