フィリピの教会は、パウロの第 2 次宣教旅行の結果、ヨーロッパで最初にでき
た異邦人が多く集う教会でした。パウロは「渡ってきて私たちを助けてくださ
い」というマケドニア人の幻を見て、海を渡りヨーロッパに行くことにしたの
です。そしてリディアという女性と出会い、その家を拠点として伝道しました。
彼は迫害を受け、短期間でフィリピを離れることになります。パウロがフィリ
ピを離れた後に、割礼や食物規定など律法遵守を主張するユダヤ人クリスチャ
ンがやってきてフィリピの教会は混乱し、その混乱をパウロが知ってこの手紙
を送ることとなったのです。
今日の箇所ではパウロがフィリピの教会に、テモテとエパフロディトを送る
ことについて述べています。パウロは投獄されており、信頼のおけるテモテと
エパフロディトをフィリピに送ってフィリピの教会を助けようとしたのでした。
テモテはギリシャ人の父とユダヤ人の母を持つ、今でいうハーフでした。テモ
テはパウロと出会い、自分の国籍は天にあるというパウロの言葉で救われたの
でしょう。そしてパウロも、「彼のような者は他にいない」(20 節)とテモテを
特別な存在として強調しています。エパフロディトはフィリピの教会からパウ
ロのもとに送られ、支援をした人物ですが、その過程で重病にかかり、死ぬほ
どの苦しみを経験しました。それでもパウロを助けるために尽力したのです。
パウロは、テモテとエパフロディトを通して、フィリピの教会に励ましと愛
を伝えました。彼ら二人は、パウロと教会との架け橋となり、信仰共同体の一
員として互いを支え合いました。私たちも、信仰において一人ではなく、共に
歩む仲間がいることを忘れないようにしたいのです。信仰者として互いを励ま
し、祈り合い、仕え合うことが私たちの使命です。パウロがテモテとエパフロ
ディトに対して抱いた信頼と愛こそ、教会の中心的あり方であり、教会が教会
たるゆえんだと思います。
私たちはややもするとパウロの働きばかりを評価してしまいますが、パウロ
の働きには多くの、パウロを支える「陰の英雄」がいたのです。